バックを持って、一度トイレに行く


「 無いし… 」


… 先週の金曜日までは
ダストボックスがあった

そこの場所の張り紙

馬鹿がタバコを吸い、そこに捨てて
ボヤ騒ぎがあってから、
撤去されてしまったらしい



…オレは仕方なく
用務員室の裏にある、
ゴミ集積所に向かう事にした




終始この辺には、人が居ない
さっき昇降口で、
用務員さんともすれ違ったし
金網の向こうは、大学の雑木林だから
誰かに見られる事も無い




理科室の裏を通り、旧体育館の脇を抜ける


用務員室が見えて来て
カバンを少し開いた




――― 微かな、女の声


昼になると
用務員さんが留守なのは、いつもの事

金でも払っているのか
生徒はここを、ホテル代わりにしている



軽く、ドアを叩く

中からの声がピタリと止んだ


「 声〜、聞こえてるから 」



"何だよ真木かよ!"
中断された焦りと、ホッとしたのとで
声のトーンがおかしな事になっている

すぐに男の方
那智がベルトを閉めながら出て来て
ふざけながらオレに
蹴りを入れる真似をしてくる


「 何だよ、学校でまでって 」


オレがそう笑うと
那智も一緒に笑う




「… 他にやる事ないからな 」