教室バロック




午後の渋谷


四車線の、道路の上には歩道橋

ビルの隙間に
人の行き交う横断歩道と
駅のロータリー

いくつかの上映中映画の看板が見える



購買で買って来た
真新しいローファーを、
カコカコ鳴らしながら
柵の隙間から、伊藤は下を覗く



「 ねえ… ここだっけ
空哉が最初にキスしてくれたの

たしか、  中ニ? 」



「 …… 中三の冬 」


「 あらら そだっけ?
最近〜 アタマ使ってないから
色々わすれちゃったっぽい

んで〜
高校にそのまんま持ち上がって〜

春だよね 」


「 …過ぎた事、いつまでも言ってんな 」





―― 伊藤がいきなり、オレに抱き着いた


体が小刻みに震えてる所を見ると
多分、泣いてるんだと思う




「 ……空哉 ね 空哉…? 」


「 ―― 何だよ 」


「 あ… アタシ
悪気なんか全然なかったんだよ?!

… 高校入って
今までと違う、試験で入って来た人

ピアス、皆着け始めたから
アタシもやってみたくって…


誕生日にプレゼントでもらって
つけてもらった…



―― たしかにアタシ!
調子のってたと思う!!

…空哉は、
いつも優しくて、おもしろくて
スッゲエ皆にも うらやましがられてた


…アイツとキスしたのは
アタシも…… 違う人とのキスって
興味あって…


―― あんなにキス位で空哉が怒るなんて
思わなかったから… 」




昔も一度、同じ台詞を聞いた