教室バロック





「 … 何でわかった? 」



「  指  」


「  ゆび…?  」


「 …お前、
ギター弾いてるとか言ってたろ

でも、練習あるって
学校終わってからすぐに帰るわりには
指の皮むけてる所見てないし

けどファッションでやってるワリには
洋楽邦楽、やたら詳しいし
音楽室なんかでは、
たまに楽しそうに、ギター弾いてたろ

だから、何なんだろうなってさ 」







――― 皮が剥けるとか…



そう思いながらも


オレはベットの上に
体を投げ出したまま、

もうとっくに硬くなって

… 最近は
だいぶ柔らかくなってしまった
指先を見ながら
その問いに答えた





「 ―― 前は やってたんだよ


高校入って すぐの春 」



「 やめたのか? 」



「 やめたっていうか 抜けたんだ 」


「 何で 」



「 ――― 夏にさ

ホットグルーヴコンテストって
高校生だけの奴があるんだけど 」


「 うん 結構古くて、有名な奴だろ? 」


「 ―― あれに出ようって
地区大会は優勝したんだよな 」

「 え すげえじゃん!! 」


「 …んで

バンドのメンバー連れて
練習はウチでしててさ

オレ小さい頃から、ピアノやってて
防音の部屋、あって


―― ギターは、ギプソンのレスポール
すぐに買ってもらえて

母親も、息子がたくさん出来たって
喜んでたんだ 」


「 順風満帆じゃん 」


「 だろ?

… 遅くならないぶんには
母親もだいぶ大人しいから

当日、弁当も持って行くって
朝から張り切ってたし

んで、本番間近


―― 渋谷、会場の24thホールの楽屋に
皆でガヤガヤ戻ったんだ 」