母親の運転する車に乗って
家の前に到着すると
玄関前で心細そうに立っている
妹の、黄色いカバーが付いた
赤いランドセル姿があった
「 ――― タカコちゃん?!
何してるのそんな所で!! 」
血相を変えた母親が
慌てて運転席から、裾をひるがえし、
飛び降りる
「 も… タカコちゃん
カギ持ってるでしょう?
―― こんな所にずっと立って
…ご近所から、お母さん、
ヘンな目で見られるじゃないの… 」
「 ご、ごめんなさい…
公園であそんでたら、
なくしちゃったみたいなの 」
「 … いいわ
早く、中に入って下さいな
そうだタカコちゃん!
ドーナツ買って来たのよ? 」
「 ほんとう?! 」
「 手をちゃんと洗ってね 」
「 はーい!! 」
タカコは嬉しそうに
靴をキチンと揃えて、玄関を上がる
テーブルに拡げられたドーナツの箱
「 ママ〜 フレンチクルーラーがない〜
たあこ、あれが一番すきなのに〜 」
「 あら、そうだった?
それといい加減、
ママって言い方治しなさいな
もう小学生なんだから…
それと、少し食べたら部屋に戻って
宿題やってしまいなさいね?
後、警報ブザーの充電もね 」
「 はい 」
「 …タカコ、あなた
少し太った?
…お兄ちゃんはスマートで
カッコイイのに…
体質違うのかしら…
まあ、タカコはお父さん似だし… 」
タカコは意味が判らないまま
チョコレート掛けのドーナツを頬張る
食った後すぐに、オレ達は上にあがって
一時間ほどして、母親が内線でなく
直接、部屋まで呼びに来た
キッチン前のテーブルには
これでもかと並べられた肉と野菜
もうもうと立ち上がる、スープの湯気
聞かされる話題は
今日母親に起きた話
何々スーパーは、お質が悪くなったとか
どこの奥さんが、
センスの良い服を着ていたとか
昼ドラは今、
ヒロインが実の父と再会して佳境とか
妹は一人で
階段から降りて来た


