「 空哉! 今日も練習か?! 」
「 おう 付き合い悪くてゴメンな 」
「 いいって!
それよりバンド、
ライヴとかやんねえの? 」
「 うん
まだヴォーカルとか決まって無くて 」
「 そっかぁ〜 」
「 ―――― 空哉 」
振り返ると、
ざわつく教室と廊下の間のドアから
隣のクラスの伊藤光子が顔を覗かせている
用務員室の中からの
" なんだよ真木かよ! "の声の主だ
「 …空哉、さっきはありがとね 」
「 なにが? 」
おかっぱにVネック、紺のカーディガン
袖を掴みながら
子供っぽい顔を、意味深な笑いに変えて
視線だけ残して走り去る
オレと一緒に話していた橘が
眉間にシワを寄せて
「 …キモチわりい あいつ 」と
吐き捨てる様に呟いた
もう学校内では
『誰にでもやらせる女』として有名で
見た目をいくら清楚にごまかそうと
それは周知の事実として、広まっている


