―― 何となく

この声音に聞き覚えがある



「 湯浅くん、だったよね 」


「 はい!! 」


「 さっき奥の工房で、少し
アート・スフィアルの絵をサイトで見て
プリントアウトして来たんだけど
この衣装でいいんだね? 」


「 はい!!まさしくこれです! 」


「 …となると
少し手間なのは、背から張り出した
機械の羽根の部分かな 」


「 ですよね

どうしますか? 表と裏の絵探して
照らし合わせるとか

それで3Dに起こします…? 」



「 ―― 必要ないよ

君に
持って来てくれる様頼んだ本があるしね

  ルウ
少しこの絵 見て貰えるかな 」




『 ルウ 』と呼ばれた少女は
コクリと頷いて、
ハルトさんの手元にある本を覗き込み
パラパラとページを進めて行く



その間にハルトさんは

壁に立て掛けてあった
ロールのままの白いもぞう紙を床に倒して
おもむろに、機械の羽根を描き始めた



「 …これ、
本当に鋳物で作ったら相当重いから、
プラスチックで造って、彩色
安っぽくならない様にはするよ 」




「 ――― 考えてなかった… 」

湯浅は額を抑え、低い声を吐いた



「 黒い羽根自体で、かなり重いから
一日中これで歩かせたり

クウヤくんを殺したいなら止めないけど
メッセ、相当な人数来るし開催中は空調
意味ないって言うしね 」



「 …はい … すみません 」




   …あれ?



「 …あの、ハルトさん
オレまだ名前

――― いってないっすよね 」




ハルトさんまで
あれ? といった表情で顔をあげる