「 …さっき 弁当食ってたじゃん 」
「 あっ アナタが捨てた物を
私がどうしようと勝手でしょ?! 」
ピンクのカーディガンに
イモムシみたいな指で
ハンバーグを美味そうに食べる
場所は中庭へ移動
オレと花ちゃんがいるのに驚いて
用務員室の客は
大慌てで道を戻って行ったのが見えた
「 …そうだけど
かなり太ると思うぜ?
カロリーとか何も計算してないだろうし
ひたすら豪華なだけ 」
" 太る "という単語に
花さんは反応して、喉をつまらせる
「 ほら 」
「 あっ ありがとう! 」
「 自分が持って来たお茶じゃん 」
それはそうだけど と復唱して
納得行かない顔で
保温ポットのお茶を、カップに再び注ぐ
「 でも… このお弁当
すごく時間かかると思う
冷凍食品使ってないし 」
「 花さんは今日、どんな弁当? 」
「 え〜と…
昨日の煮物の残りのカボチャでしょ?
プチトマトとか
あと冷凍の魚のフライとか
かなり手抜き 」
「 そんくらいでいいんだよ
…毎日毎日、これでもかって程
手、かけてさ
―― 重い 」
「 あ! じゃあこれから
私のお弁当と交換する?! 」
「 やだよ
変なウワサたったらイヤだし 」
突然
花ちゃんは
殴られたみたいな顔になって
動きを止める
「 … 花ちゃんは先生なんだし
そういう意味だよ
それにオレ、彼女いるしさ 」
「 そ、そうだよね!
空哉くん、キレイだし
今着てる服も何ていうの?
ビジュアル系? 」
「 この学校、制服でも私服でもいいし 」
「 う、うん!
皆オシャレだよね〜!
私が通ってた頃は、
私服着てもよかったけど
――――― そうだ!
彼女さんに、お弁当頼んでみたら?! 」
「 … されるかわからないからムリ 」
チャイムが鳴って
足元で舞う木枯らしの音も
聞き返す花さんの声も、掻き消した


