集合団地の一室が本当の家。

居間と勉強部屋と寝室の小さな部屋に、パパ、姉、兄は暮らしている。

そして、居間にあるタンスの上にある黒い淵の中で、口端を少し上げ微笑む女性。

いつも微笑んでいて、居間のどこにいても見られてる。

追い掛けられている視線に夢咲はパパに尋ねた。

「あの人は誰?」

パパの膝の上で真っ直ぐに目を見て口を開く。

ずっと気になっていた。

居間の何処にいても、微かに微笑む視線から逃れられない。

ずっと怖くて…

なんで動かないのか…

なんで白黒なのか…

なんで黒い淵の額に入っているのか…