改札を抜けた私の脚は、ある目的地を颯爽と目指していた。
残り時間まで後6分も無い。
無理をして走ればギリギリ間に合う距離だ。
しかし、こんな時に限ってバケツの水を引っくり返した様な雨が私の行く手を拒む。
今朝の天気予報では雨の確率など無いにも等しかったし、仕事場を出て、電車に乗ってからも暫く雨など降っていなかった。
自分の降りる数駅手前から降り出した雨に、私が傘など持ち合わせていないことはあたりまえのことだった。
ノートパソコンのカバーを必死に両手に抱え込み濡らさないように走る。
ソレがどれだけ効果があるかは結果次第だ。

しかし、今朝の天気予報は見事に大外れだ。
そんなことに、愚痴を考えるよりも、傘もささずに、ひたすらに目的地へ続くなだらかな坂道に勢いよく向かう。
スーツは見事に濡れ鼠になり、折角デートの為にとセットした髪は見る影もない。
普段は人通りの多いこの道も、今は、心なしか傘をさした人がチラホラと見てとれる程度だった。
他の人たちと言えば、自分と同様に傘を持たず反対方向へと向かっている。
最終電車の時間が近いのだ。

なだらかな上り坂を流れる水は、買ったばかりの靴をもグシャグシャにしてくれていて、今の自分は端からみても、身なりも心もボロボロなことだろう。
息を切らし肩で呼吸をして見上げた目的地は、既にシャッターが下がって中へは入れなかった。

溜息をひとつ吐き、自分の身体が冷めていたことに近くのバーガーショップへとゆっくり脚を向けた。
中で熱いコヒーとお気に入りのハンバーガーを頼み、エレベーターで3階のフロアへ向かう。
時間帯が時間なだけに、客もまばらだった。
ずぶ濡れの私は自然に窓側の席へ向かって座った。
ソコが私のお気に入りの席だった。
濡れ鼠の私が席へ着いても誰もかえりみる人は居ない。
窓越しに見える人たちはソレぞれに好きなコトをしていた。

私と同じくずぶ濡れの女性が入って来て、チラリと周りを気にしたが、やがてタオルで服を懸命に紙と服を拭きはじめた。

2人組の若い女の子が居たが、濡れてはいなかったから雨が降る前からココに居たのだろうか?

同様に1人の男の子は、ゲームに夢中で一切周りを気にしていないようだった。

"他人に無関心"
ここが私の住む"東京"だ。