ガチャンッ


乃里子は力いっぱい受話器を置いた。


大人は何も分かってない。


皆と同じになりたい訳じゃないのに、勝手に理解して的外れな発言をする大人。


乃里子はそんな大人達を心の底から幻滅してしまった。


「乃里子さん…
学校が嫌なら行かなくても良いのよ?」


普段から穏やかな乃里子の母親は、この日も優しい微笑みを浮かべていた。


乃里子と同じ綺麗なモカ色の髪、祖母譲りのグレーの瞳、英国貴族の血を引く由緒正しきお嬢様、白石・フェアリー・華乃子(かのこ)。


「乃里子さんには許せない事があるのでしょう?
大人は解ってくれないと腹を立てているのでしょう?」


「…お母様…」


「だったら許さなければ良いのよ?
乃里子さんの信念を曲げてはだめ。
信じるのは大人じゃなく自分自身なのだから、乃里子さん。」


「…じゃあ、お母様は?」