乃里子は自分の髪にケチを付けられた事が許せなかったのだ。


乃里子の髪は茶髪と簡単に言える色ではなく、綺麗なモカ色。


それは大好きな母親からの遺伝で、イギリス人の祖母と同じ髪の色だった。


乃里子の大好きな、大切な、自慢の髪を馬鹿にされた事。


それが何よりも許せなかった。


『乃里子さんが学校に出て来るのを皆さん楽しみにしていますよ?』


電話口から聞こえた教師の声は、オドオドしていて怯えている様だった。


「…私の髪を馬鹿にしたんです。」


『そうですか…
なら黒く染めてみてはどうですか?
皆さんと一緒になれますよ?』


教師は明るい声でそう言い放った。