「でも本当に驚きました。
『放課後姫』様が、乃里子さんの本当の姿だったんですね。」


楓はカップを手に取ると、今でも夢のようですと笑った。


「ごめんね?
色々騙すような真似して…」


「いいえ、乃里子さんのおかげで私は幸せなんです。
騙されたなんて思っていません。」


乃里子が初めて幸助と話をした日、幸助は楓と神谷を婚約させたいと言った。


一人娘を嫁に出すなら、神谷のような男が良いと幸助は考えていたのだ。


「でもあの親父も人が悪いよな?
楓ちゃんと神谷をくっつけたいと思ってんなら、早く言えば良いのにさ。」


剛志が言うと、乃里子は諌める様に近くにあった新聞を投げつけた。


「言葉が悪いわよ。
まぁなんにしても良かったわ、楓ちゃんが幸せそうで♪」