楓は目を見開いた。


「楓ちゃんは将来、平井カンパニーの社長夫人となる存在よ。
だから…
お父様は、そんな楓ちゃんの支えになるような立場に神谷さんを、とお考えらしいわ。」


「…でも婚約者って…」


楓は呆然と呟いた。


「神谷さんの身を早めに固めたいって事かしら?
将来神谷さんには重役を、とお考えなのでしょうね…」


乃里子が言うと、楓は目に涙を浮かべながら俯いた。


「楓ちゃんは、どうしたい?」


「…え?」


楓は涙を流しながら、乃里子を見た。


「もし神谷さんを諦められないなら、私が協力するわ。
必ず二人を幸せにしてあげる。
でも…
その代わりに、平井の名は捨ててもらうわ。
どうする?」