クラブ棟の非常階段から中庭に抜ける。


細い道は普段人気もなく、校舎に着く頃には『放課後姫』が突然現れたように思わせることが出来る。


乃里子は一階の渡り廊下を抜けて、温室に向かった。


「おい、あれって『放課後姫』か?」


「うわぁ、本物だよ!!」


途中すれ違った男子生徒が乃里子を見ながら目を輝かせていた。


けれど声をかけて来る事はない。


『放課後姫は、悩める人の前にのみ立ち止まる。』


それは乃里子が新聞に載せた記事だった。


放課後姫の目撃情報として毎回小さなコーナーを展開し、目撃情報を掲載していた。


そうして少しずつ『悩みのない生徒は、放課後姫に近付いてはいけない』と全生徒に浸透させた。