剛志は陽太の頭を軽く叩くと、本を受け取った。


「返すのはいつでもいいからね♪」


陽太は笑顔でそう言った。


「さんきゅ。」


陽太と別れた剛志は、教室に向かうのも面倒で、人がいなさそうなクラブ塔に向かった。


さすがに誰もいないだろうと油断していた剛志は、曲がり角で思い切り女子生徒にぶつかってしまった。


「悪い!
大丈夫か?」


剛志はぶつけてしまった腰をさすりながら立ち上がった。


「はい…
大丈夫です。」


女子生徒は制服を軽く直しながら立ち上がった。


剛志と女子生徒が目を合わせた瞬間、女子生徒は慌てて顔を伏せた。


『こいつも俺を見てビビってるのか…』


剛志は軽くため息をつくと、歩きだそうと一歩踏み出した。


「待って!
動かないでください!」


女子生徒はいきなりそう言うと、かがみこんで床を触った。


「…なんだよ?」


「…コンタクト、落としました。」