「…馬鹿…」


泣き声の乃里子が、剛志を睨みつけた。


「馬鹿じゃないの!?
剛志が普通じゃないなら、私だって普通じゃないよ!
『前から気になってた』なんて…」


涙で濡れた乃里子の頬が、紅く染まっていく。


「信じられるわけないじゃん!?
私は剛志に酷いこと言ったもん!!
無自覚だったのが余計悪い…
自分に腹が立つ!!」


乃里子がキッと剛志を睨みつけた。


「だから、前からなんて信じられない!!
だってっ…
んっ…!?」


イライラと喚いていた乃里子が、突然黙ってしまった。


声を出そうにも、言葉を伝えようにも、乃里子の唇は剛志に塞がれてしまった。