剛志は本を閉じると、勢いよく立ち上がった。


反動で椅子が大きな音を立てて倒れた。


「梓とじじいが好き勝手やるからだろ!?
なんなんだよ!!
俺が誰と付き合おうが、誰を好きになろうが勝手だろうが!!」


剛志が怒鳴る姿を、梓は静かに見つめていた。


「乃里子には俺なんかよりもいい奴がいるだろ!?
乃里子の答えは決まってる!!
だけど…!!
だけど、お前らのせいで言えなかったんだ…
乃里子は…優しいから…」


剛志は怒鳴りながら、頭の中であの日の乃里子を思い浮かべていた。


乃里子が言えなかった本当の理由は分かっていた。


剛志が隣にいたからだ。


だから乃里子は答えを言わずに微笑んでいたのだ。