「本当にじじいには困ってるんだよ…
じじい自分勝手だからさ。
梓と喧嘩になるのもよく分かるよ。
俺なら離婚してるよ…」


剛志は沈黙を埋めるように話しつづけた。


「…良いの?」


「へっ?」


乃里子の呟きに、剛志は変な声を出してしまった。


「忘れても良いの?」


「あ、あぁ…」


剛志は曖昧に返事を返した。


「…分かった。」


乃里子は俯いたまま言うと、ぱっと顔を上げた。


「ここまでで良いわ、迎え呼ぶから。
じゃあまた。」


乃里子はそう言うと走り出した。


剛志は声をかけられずに、立ち尽くした。