「え……」

オリビンは理解できないといった表情をした。

「知ってたんだよ。ラディウスも、ディランさんも」

クルーエルはしゃがんで、オリビンの顔をまじまじと見た。
ああ、やっぱり少し似てるな、と想った。

「オリビンは、この国の一番最初の姫だったんだね」

『オリビン、姉様』

ためらいがちに声が聞こえる。
クルーエルは直感でラディウスじゃないな、と思った。

『すみません。俺達、知ってたのに、オリビン姉様を追い込んでしまった』

「で、んか……」

『殿下と呼ぶ必要はもうないだろう』

ぶすっとした声が聞こえる。
これはラディウスだ。

『復縁すればいい。事実を民衆に知らせて、姫として、帰ってくればいいよ』

「い、いいんですか?私、皆の記憶を……」

『覚えてる?姉様』

オリビンの言葉をさえぎるようにディランが口を挟んだ。

『俺達、あ、俺とラディウスね……。俺達がオリビン姉様にあげた髪飾り』

「あれは、まだ幼い俺達の精一杯のアピールだったんだ」

クルーエルは振り返る。
オリビンは驚いて顔を上げる。
そこには、瞳の色以外、すべてそっくりな双子がいた。

「帰ってきてよ。俺達のたった一人の姉様なんだ」

ディランはそのまま、涙を零すオリビンをきつく抱きしめた。

「復讐なんか、いらないんだ」

オリビンは恐る恐るディランの背中に手を回すと、うぅ……と嗚咽を漏らした。