時雨の奏でるレクイエム

「眠れない。そもそも寝るには早すぎる」

それに気づいたクルーエルは楽な室内着に着替えて部屋を出た。

「こういうとき、どこに行けて、どこに行くべきで、どこが行けない場所なのか全然わかんないなぁ……」

「あら。クルーエル様」

「あれ、オリ、ビン?」

オリビンはもはや見慣れたメイド服ではなく、普通の女性としての整った服装をしていた。
髪には服にはお世辞にも合ってるとは言えないが、大事に使われてるとひと目でわかる羽飾りをしている。
普通にどこかの令嬢のようだ。
実際そうなのかもしれない。

「どうされました?」

「あ……暇潰ししたいなぁって。ここは本当に自分でやることが少ないから」

「そうですねぇ。城にこもる女性は基本的に暇ですもの。わかりますわ」

「あ、それなら。ねぇ、オリビンさえ良ければ話し相手になってくれないかな」

「え……?」

「……や、やっぱり駄目かな」

「そ、そんなことありませんわ、クルーエル様。そうですね、ここではなんですからサロンに行きましょうか」

「うん。オリビンにまかせるね」

クルーエルは、オリビンが羽飾りを気にして栗色の髪をいじっているのを見て言った。

「その羽飾り、大事なものなの?」

するとオリビンは慈愛に満ちた笑顔で頷いた。

「ええ。大事な子達から貰ったんですのよ」

それからクルーエルとオリビンは他愛のない会話をしながらサロンへ向かって行った。