「その、眼帯は」

ディランは搾り出すようにしてその言葉を紡いだ。
ディランの左目にもまた、眼帯がかけられている。

「生まれたときから見えなくなっています。傷が出来やすく、悪化しやすいのでつけることもあります」

「なんで私と顔が似ているんだ……?」

「殿下を納得させる答えを、あいにく私は持ち合わせておりません」

「私が忘れていたのはお前のことなのか?何故……」

ディランは片手で頭を抑え、痛みを堪えるような素振りを見せた。

「うぅ……今日は先に失礼する」

そう言うとディランは部屋を出て行こうとした。
そして、クルーエルの傍を通るとき、ディランがクルーエルを見た。

「その瞳……」

「え?」

いきなり面と向かって呟かれて、クルーエルは呆けた声をだした。

「嫌な色だ。全てを蝕み、覆う灰のような……」

そう言うと、ディランは幾人かの兵と共に立ち去っていった。

「気にすることないわよ」

クルーエルの隣に座っていた女性がクルーエルに話しかけてきた。

「殿下は赤い目以外の瞳の色が嫌いなんだから。私は綺麗だと思うわ、その色。翳ると青く光るのね」

「あ、あの……貴女は?」

「私?私はあそこにいる鳶色の髪をした赤目の幼馴染」

彼女が指したのは、ディランに最も近い席に座っていた青年だった。

「殿下の命令で連れ去られそうになっていたところを無理してついてきたの。殿下はあれで優しいから、一緒にここに滞在することを許してくれたわ」

「じゃあ、もしかして」

「ここにいる赤目以外の人は皆、赤目となんらかの関わりを持ってる人達よ。あなたもそうなんでしょ?」

彼女はちらっとラディウスを見ると、苦笑して言った。

「あなた達、これから大変だと思うけど、頑張りなさい」

「……はい」