「すみません、旅人さんですか?」

声をかけてきたのは、くたびれた印象の強い女性だった。
彼女もまた、喪服に身を包んでいる。

「そうだが」

ラディウスはそれにぶっきらぼうに応えた。

「ああ、どうかお願いです。私の息子に会っていただけないでしょうか?」

「どうしたの?」

「息子は病気でずっと部屋から出られないのです。どうか外の話しをしてやってくださいませ」

「病気……?」

ラディウスは眉をひそめた。

「ええ、ですが感染するようなものではありません。筋肉が衰え、手足が動かなくなる病気なのです」

「私達の他にも家に呼んだ人はいるのか?」

「え?えぇ。できるだけたくさんの人達を呼ぶようにしています」

「なら、行こう」

「行くの?」

クルーエルは首をかしげて言った。

「いいの?」

「いいんだよ」

ラディウスは笑いを堪えるようにして言った。

「きっと、俺達にとっても有益になるだろうから」