「闇の幻獣王……ウラド?」

ラディウスは、なにかを思い出しそうな、それでも思い出せないなにかがあるような気がして顔をしかめた。
反対に、クルーエルは顔を強張らせる。

「そう。光の幻獣王と闇の幻獣王の力が均衡してはじめてフェアルーンは存在できるのじゃ。どちらも幻獣界に存在しているのだがの、どちらか一体だけがフェアルーンに召喚されてしまえば、均衡が偏り、フェアルーンは滅んでしまう」

「……だが、今まで王国も帝国も幻獣王を召喚していなかったか?」

「それは、光の幻獣王の影を召喚していたにすぎぬ。均衡が崩れるほどではない」

「だけど、闇の幻獣王は、自分の代わりに影を送ったりしないよ」

クルーエルが言う。その表情は未だ堅く、険しい。

「闇の幻獣王は、いわば負を司る幻獣。破壊や滅亡は、闇の幻獣王の望むところなんだから」

「そうじゃ」

アルミナが、クルーエルの話しを引き継ぐ。

「フェアルーンを守るには、光の幻獣王を召喚しないといけないのじゃが。それは、不可能なのじゃ」

「どうして」

「忌々しい。記憶の幻獣を召喚することができる奴がおるのじゃよ。そいつのせいで、光の幻獣王を呼びだす方法は忘れられ、代わりに闇の幻獣王を呼びだす方法を、妾と王国の第一王子の記憶に植えつけられたのじゃ」

「そして、たぶんラディウスのお兄さんは、呼び出すことに半分成功してる」

「そうじゃ。それが、フェアルーンに影響をもたらしているのじゃ」

「そう。闇の幻獣王の眷属のモンスターだよ」