ラディウスは、帝国の服に身を包んでいた。
簡素だが、布は上質で、着こなしているから余計に似合っているように見える。
髪を解いていて、銀の髪が肩にかかっている。
なぜか右目に眼帯をつけていた。
こうしてみると、ラディウスはすごく綺麗だった。
男性とも、女性とも言える、中性的な美しさで、銀の髪と夕焼け色の瞳が、さらにそれを際立たせている。


クルーエルは少し、悲しくなった。
私は、みすぼらしいただの町娘だ。
幻獣憑きで、近い将来、幻獣王の娘としての役割を果たすことになるといっても、ラディウスとは、根本的に違う。
存在でいえば、ラディウスは既に幻獣だし、王子ということは、王族ということ。

――ラディウスは、綺麗だな……。でも、私は、ラディウスやアルミナみたいに綺麗じゃない。

「……どうしたんだ」

ラディウスは心配したのか、少しかがんでクルーエルの顔を見つめた。
だから、クルーエルは自分の気持ちを隠して笑った。

「ううん。なんでもないよ。どうしたの?その眼帯」

「ああ、これか」

ラディウスは、眼帯に手を当てる。それは革でできた物々しいやつで、顔の右半分を隠している。

「生まれたときから、右目が見えない。クルーエルに会う前になくしたから、今まではつけてなかったんだ」

「……え?それ、大丈夫なの?」

クルーエルは不安になって、ラディウスの眼帯に触れた。
それはひんやりしていて、その不安を強くした。
ラディウスはクルーエルの手を掴むと、笑った。
ラディウスが笑うと、どこか冷たい顔も、優しくなるから不思議だ。