時雨の奏でるレクイエム

「……王子?」

クルーエルはその言葉が理解できない、と言うようにラディウスの顔を見上げた。
ラディウスの顔には緊張がはしり、アルミナをじっと睨んでいる。
当のアルミナは、かか、と笑い、また歩き出す。

「まあ、なんにしてもついて来ることじゃな。ここは妾の城ぞ」

そのまま、3人は何も言わず城のなかを歩く。
3人とも、胸の中にそれぞれの思惑をいだいて。



アルミナは、一際大きい扉の前で止まると、振り返って言った。

「この中で、待っておるぞ、お二方……」

そのまま、アルミナの身体はすう……と消えた。

「ラディウス……」

「ああ、行こう」

ラディウスは、扉に手をかけ、開く。
すう、とほのかに甘い香りがして、ラディウスはなにかを忘れているような、そんな不安に駆られた。