時雨の奏でるレクイエム

蜂の巣という酒場に数日前から飲みにくる少年がいる。
なにも信用していない瞳は赤く煌き、後ろで無造作に結われた髪はくすんだ銀色で、ラフな旅人の装束を着こなしている。
そして、どこか気品のあるしぐさを時折していた。

「マスター。この辺に、フリーの召喚術師はいないだろうか」

蜂の巣のマスターはちらと少年を見るとまたすぐにグラスを磨き始めた。
少年は何も言わずに待つ。
やがて、マスターが磨きあげたグラスにカクテルを注ぐと、少年にだした。
琥珀色の酒からはほんのり蜂蜜の香りがする。

「西に15キロメルトル。焼けた街ハーヴェスト。そこに、いる」

「情報の提供感謝する。俺のことは忘れてくれるとありがたい」

少年は酒に手をつけず、銅貨を3枚だけカウンターに載せて店をでた。
マスターは、今の客のことを忘れた。