「ね、ねぇラディウス……今のって」

小走りに先に行く二人を追いかけたクルーエルはラディウスに話しかけた。

「ああ、巫女だな。名前は知らないが」

「やっぱり、夢の?」

クルーエルが聞くと、ラディウスは首を横に振った。

「わからない」

クルーエルはもう一度振り返ってみたが、小部屋はどこにも見当たらなかった。
ただ、きらきらと結晶の輝く道がどこまでも続いているだけだった。
――おかしいな、どうして。
それでも、あとで聞いてみればいい、とそこから深く考えはしなかった。


「さあ、こちらが幻獣王のおられる光の神殿でございます」

呆れるほど高い神秘的な扉の前でテオは立ち止まった。

「見覚えがあるな……?記憶でなく、実際に見たことがあるような」

ラディウスが扉の前で首を捻った。

「どこだろう」

ラディウスが考え込んでいる間にテオはなにやら扉の前でぶつぶつと呟いていた。
そして二人のところに戻ってくると、手で扉を指し示した。

「王の許可が取れました。私が案内できるのはここまでですので、あとはお二人でお進みください。それでは失礼します」

「あ、ありがとう、今まで!」

クルーエルがお礼を言うと、テオはにっこりと笑って元の道を帰っていった。
その姿を見送ったあと、クルーエルは扉を振り返った。
それを確認したラディウスが張りのある声で叫んだ。

「音の幻獣、預言の幻獣、ただいま帰還いたしました!」

扉が音も無く開かれる。
そこから光が漏れ出して、二人を包み込んだ。
扉が完全に開くと純白の光に照らされた道があった。

「行くか」

ラディウスはクルーエルの手をとって振り返った。
冷たさを感じる紅い瞳に自分の姿が写るのをクルーエルははっきりと感じた。
なぜか胸が高鳴って微笑むと、ラディウスも微笑みを返した。

「うん、行こう。幻獣王に会いに」