「と、ところで。ソフィアさんは何を司ってるの?」

「私?私は魔法を司る幻獣ですわ。本来は幻結晶を司る幻獣でしたが、フェアルーンでの幻結晶の使われ方が変わり、おのずと司る対象も変わっていったのです」

「へぇ。対象が変わる……そんなこともあるんだね」

「幻結晶は幻獣の魔力が凝縮された石だ。昔は奉られその力を使うのも神官だけだったのだが、今では召喚士でなくとも魔法が使えるアイテムに成り下がってしまったからな」

「王国の、預言獣の逸話といい、フェアルーンの人々の、幻獣に対する認識が悪いほうに変わっていってるんだね……」

3人ともその言葉に沈黙した。

「それかもしれないな」

「え?」

ラディウスの呟きにクルーエルとソフィアは顔を上げた。

「それかもしれない。闇の幻獣王が、フェアルーンに下りようとする理由。人々の幻獣に対する認識が、光の幻獣王の加護から離れて闇の幻獣王に近づいてきているんだ」

「そんなっ」

クルーエルがラディウスの胸にしがみついた。

「それじゃあどうすればいいの?やっぱり神様に頼らなきゃいけないの?生贄に――」

「クルーエル」

ラディウスがそっとクルーエルを引きはがす。
そして目を見て名を呼んだ。
クルーエルはラディウスの紅い瞳を見つめて、そして言葉を失って見とれた。
――紅。夕焼けの色。冷たいのに、暖かい……。

「あっ……」

気がつけば涙が出ていた。

「あれ、なんで?止まらない……」

ラディウスは何も言わずクルーエルの頭を撫でた。

「答えが見つかれば、そこに解決方法を求めることができるんだ」

ソフィアはいつの間にか姿を消していた。
遠くに、テオの姿が見える。