30分前から、謙一の目の前にで開かれた「高校2年 数学B・試験直前対策」には何も書き込まれていない。

麦茶の中の氷は全て溶けきり、グラスを伝った水滴は問題集の端を、確実に浸食し始めている。

問題を解く意思がないわけではない。

現に謙一の右手には中学の卒業祝いに学校から贈られたシャープペンシルが収まっている。

問題が難しすぎるわけでもない。

ただ問題自体をよんでいないのだ。