電車が多摩川を過ぎる頃、わたしはふぁんたに起された。



「姉さん、じきに駅だよ」


「ふわぁーっ、ねむーい」



わたしはふぁんたの肩を枕にすっかり寝入っていた。



「姉さん、おんぶしてあげようか!」


改札を出た後でふぁんたが言った。



「な、何を唐突に!」


わたしは後退りした。


「僕ね、ママが言うには兄さんよりずっとパパに似ているんだって顔も背丈も。・・・だから!」


ふぁんたはまたニコニコした。


―よく考えると殆どこの表情だ。よく維持できる―


「だからって、何よ!」


「姉さん、一度もパパにおぶさったこと無いでしょ。僕代わりにやったげるよ」


ふぁんたはホントにイノセントな顔をして言った。


「ふ・・・」


「ふ?」


「ふざけないでよ!!なぁんでそんなみっともないこと」


「どうして?僕、誰が見ててもちっとも恥ずかしくないよ。ほら、おぶさってよ」


「わたしが恥ずかしいの!!」


わたしはそう捨て台詞を吐くと、ふぁんたを置いてさっさと先に歩き出した。


―・・・潤んだ目を見られたくなかったから―


後方に、重箱をカタカタいわせてついて来るふぁんたのぬくもりをしっかり感じた。