Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―






わたしの隣の席で、新潟出身の異様に明るい性格の樋口さんが一部始終を教えてくれた。



―この際出身地はどうでもいいか―



この頃わたしはふぁんたのおかげで(せいで?)性格が対外的にまろやかになって来たらしく、ぽつぽつと親しく声をかけられるようになっていたのだ。



「杖をついたおばあさんが交差点を渡りきれなくて横断歩道の途中で立ち往生しちゃったのよ。それを見て歩道にいた男の子が車の間をぴょんぴょんてそれはもう軽やかに。おろおろしているおばあさんまでたどり着くと、ひょいって抱き上げて、信号青になるまで待って、デパートの前でおばあさんを下ろして、おばあさんが深々とお辞儀をして、・・・それを照れてその子が頭をかくのがまた可愛いのね。・・・それでおばあさんのことだっこするために車道においたままだった包みを、急いで拾ってまたこっち側に戻ってきたのよ。それから面食いの渡辺さんが手を振ったら振り返してきたんだって。分かった?この説明」



樋口さんは楽しそうに教えてくれて、わたしはよーくわかりましたと返事をした後でいやーな予感がした。