アパートの玄関のドアを開け、わたしは先に入ってふぁんたを、招き入れた。
座りなさいよ、とわたしが言って初めてふぁんたは腰を下ろした。
「いい部屋だね、ばんび」
彼はぐるっと首を回してそう言った。
「ありがとう、ところで」
「なに?」
「わたしは、その名前が嫌いなの」
「どうして?素敵な名前じゃない。敦子さんはパパの趣味を知っていてそう決めたんだよ」
「多分日本で一つしか無いわね」
「僕の名前もあまり聞かないよ」
「でしょうね」
「でも僕は気に入ってる。兄さんも今では自分の名前気に入ってるよ、ガールフレンドが褒めたから。今は彼の奥さんになった。ジェニファーって言ってとっても美人で優しいんだ」
「あなたの家族の話はどうでもいいの。わたしの父、もし本当にあなたのパパがわたしの父でもあるなら知っている限りを教えてくれない?それとわたしを名前で呼ばないで。母親にだってめったに呼ばせなかったんだから」
「え、そうなの?敦子さんかわいそう。・・・いいよ、ばん・・・君がいやなら呼ばない」
「じゃあ話して」
「姉さんてなら呼んでいい?」
「・・・それによって話がスムーズに進むというのなら仕方ないわね」
「やったぁ!」
ふぁんたはパッと顔を輝かせた。