大型冷蔵庫と書いてあるその箱の中には人が寝ていた。それも気持ちよさそうに。



「ちょっと、あなた起きてよ!」



わたしは恥ずかしさのため完全に思考能力が低下し、その異様な状況を判断する前に段ボール箱に顔を突っ込んでいた。


―一刻も早く、箱を撤去させねば!―




「うーん、よく寝た。今何時ママ?」


箱の中で男が伸びをしながら言った。



「誰がママだ!寝ぼけてんじゃないわよ!あなた誰に断ってひとの名前を・・・」



「あーっ、バンビだ!写真とおんなじ」


男は嬉しそうに抱きついてきた。




「なにすんのよ!変態っ!」


わたしは男をひっぱたこうと手を挙げようとしたが、ぎゅうーっと抱きしめられていたため、びくとも動けなかった。



「誰か助けて!痴漢ですっ!」


首をうしろにまわして叫ぶわたしに、男は言った。



「水沢敦子さん死んじゃったでしょ。バンビとてもかわいそう」



「・・・・何で、母さんの名前を知っているの?」



わたしはまじまじと男を見た。