電車は多摩川を越えた最初の駅で停車した。 ここから降りる人がどっと増える。 母とわたしは、川をまたいで引越したのだった。 わたしにすれば川が家の西から東に位置を変えたに過ぎない。 電車にしたってたったのひと駅、数分の距離だ。 けれど母は東京都から神奈川県に住所が変わったことを 「凄い引越し!」 とはしゃいでいた。 わたしはそれをぼーっと思い出した。