わたしが所属する〔海外旅行課〕の二階フロアーは、数名の営業男性社員の他は女性が数十名の大所帯で、営業が出払った日中は、男性はただ一人残った鈴木課長がぽつんと申し訳なさそうにデスクに座っている。



女性社員は彼を〔スージー〕とニックネームで呼んでいた。



殆どの社員にはあだ名がついていた。



鈴木課長は以前わたしに申し訳なさそうに、電話で臨時勤務を申し込んできた人だ。





わたしは新人社員の歓迎会で、いくら鈴木課長が優しくても社内で上司をあだ名で呼ぶのはどうかと思う、と怒り口調で発言してからなんとなく社内での空気の冷たさを感じていた。


昼食を誘ってくれる人もいなくなった。もちろんアフターファイブ ―実際にはアフターナインくらいだが― もだ。


よくよく考えれば当然のことだけど、いまさら言ってしまったことはもう引っ込まない。