敬虔なクリスチャンであった祖父母が亡くなった後母は、母やわたしが育った家をあっさりと教会の福祉施設に寄付して2DKのアパートに移った。
「二人で住むにはあの家は広すぎるしねぇ」
後々聞いたことだが、母が誰の子供かわからないわたしを身ごもった時、白い目で見る近所の人々の中で、教会の人たちは本当に暖かくわたしたち一家に接してくれたのだそうだ。
「それだけで寄付しちゃうんだものね」
母の遺影に向かってわたしは言った。
しかし、けっこうお金を遺していってくれた祖父母と母のおかげで、わたしはとりあえず金銭的な窮地に立たされないで済んだ。就職が決まっていたことも救いだった。