フォード神父は母の告白をすべてわたしに話して聞かせた。



わたしは母に対しても、太郎夫妻に対しても、少しも腹立たしくなかった。



母はあののらりくらりと世間ずれしたように見えた性格の裏に、深い悲しみをすべて覆い隠し、希望だけを引き出して生きてきたのだ。



わたしのために。



そして、アメリカの太郎に手紙を書くことを自分の救いとしたのだ。



もしかすると、母はわたしを本当に太郎の子供だと思いたかったのかもしれない。



フォード神父はここまで話したかったために、わざと口を滑らせてくれたに違いない。