Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―






再びスポットライトが当たったステージに注目したみんなは、ママの視線が一点を見つめているのに気づいた。



「あれ?誰だあの婆ちゃん」


美和がママの視線を追って、入り口の付近を指差した。



イスにちょこんと座った、白髪の老婆が見えた。



その細い手は拍手を止めていなかった。



「・・・おかぁちゃん」


ママが呆然と立ち尽くしていた。



ママの言葉を聴いて会場がどよめいた。



「とっても良かったよ。・・・立派になって・・・なんで一度も帰ってこなかった。父ちゃんはここ何年か寝たり起きたりだけども、いっつもお前の心配をしてるよ。二十五年間ずーっとな!お前は一生懸命生きてるんだ。なにも恥ずかしいことは無いよ。お前が笑われるなら私らも一緒に笑われてやる!心配すんな剛造」


老婆はママを見て目を細めた。



「おかーちゃん」



みんなはしーんとして母子を見守っていた。



「や、やーねぇおかぁちゃんたら人前で本名暴露してくれちゃってもうっ!あたしさやかっていうのよ。し・ら・と・り・さ・や・か、覚えてね!」


おどけたママの目は濡れていた。