「本当にどうしようもないのよ、こればっかりは。理解してもらうのは難しいかもしれないけど。あたしは、男性の身体に女性の心を持って生まれてきたものだから。・・・そろそろ閉めるわね。ディレクターが手を回しているから」
ママは誰もいない天井に向かって冗談ぽくそう言った。
「あたしの母は、今年で七十になるの。父はそれより六つ年上よ。頑固で厳しかったわ。なよなよしてるってよく殴られた。母はいつもオロオロしていた。家の中があたしのせいでギクシャクしてると思い込んだときもあった。でも、あたしは両親を、家族を愛しているの。命かけてもいいわ。家族のためなら死ねる。今必死でお金貯めてるの。両親のためにピラミッドのようなお墓を立ててやるのよ。本当は生きているウチに御殿に住まわせてやりたいんだけど、向こうが嫌がるだろうしね。骨になっちゃえばあたしがお墓参りに行っても拒否できないものねぇ。・・・最後に、あたしの夢であったレビューショーを実現させてくれた可愛いふぁんたちゃん、本当にありがとう。お金かかったでしょう?ごめんね。良かったら体で返すからいつでも言って!皆様もこんな一方的なショーに付き合ってくださってどうもありがとうっ!」
明かりがついた。
会場は拍手の嵐だった。
みんな感動でシワくちゃな顔をしていた。
特にスージーがひどかった。
ぶーぶーと鼻をかんでいた。
ママは最高に嬉しそうな顔をして、会場の隅々まで見渡しながら手を振った。
「お前、やるじゃん。さすがはあたしの婚約者だな!」
美和がふぁんたのほっぺたをピタピタと叩いた。



