「中学、高校とお友達が出来なかった。男といれば恥ずかしいし、かといって女の子に混じって好きな男子生徒の噂話も出来ないしね。白熱しちゃいそうで!」
ママは照れ笑いをした。
でもわたしの目には悲しい表情に映った。
「そのうちやっぱりバレちゃって、どういう訳か先生にまで嫌われちゃって、そうなると勉強までやりにくくなるのね。・・・あたしの生家は西伊豆の小さな漁村にあって、すぐに噂の広がるところなの。あたしは高校を中退して東京に出てきたわ。十七の時よ。それから二十五年間一度も帰ってないわ。当然家族にも会っていない。会うどころか手紙も電話も無し。・・・時々考えるの。私は真面目に休まず働いて税金もキチンと払っている。ゴミの日だってちゃんと守って、電車やバスでお年寄りに席だって譲るわ。マナーやモラルに反した恥ずかしい行動だってしないし、社会のルールもしっかり守っている。他の子たちもそうよ、ねっ、さゆりちゃん」
ママが後ろを振り返ってそう言い、さゆりちゃんが目頭を押さえてうなずいた。
「なのに何故!ってね。男を好きだって意外誰にも迷惑はかけてないわよっ!て叫んじゃう。・・・周りに人がいないか確かめてからねっ。けどそれが一番迷惑だったりして!」
ママは一人で、ははははと笑った。



