一瞬音楽がピタッと止んで舞台が暗くなり、スポットライトが一点を照らした。
孔雀が羽を広げたゴージャスな衣装に身を包んだ権田ママの登場だった。
「げっ、鯛や平目の中に鬼オコゼが混じった!」
美和がすかさずチャチャを入れ、会場内はドッとウケた。が、ママの歌声はみんなを黙らせた。
その甘く切なくハスキーで訴えるような声が奏でるジャズの調べはすべての招待客を魅了した。
わたしは不思議の空間に迷いこんだ旅人になったような錯覚をおこした。
会場内は水を打ったように静まり、時間が止まってしまったみたいだった。
パチパチパチと拍手の音が静寂に割って入った。
スージーと美和だった。
それが合図かのように、続けざまに割れるような拍手が渦となって鳴り響いた。



