病院から重い足取りで健さんの家へと帰る。

皆、私が手術を受けるために、たくさんたくさん協力してくれているのに…



家に帰っても、ずっと、手術が受けられないかもしれないことが頭から離れなかった。
一人で帰りを待っていたからかもしれない。
家事をしてもテレビを見ても、その時書いていた小説を書こうとしても。
何をしても、だめだった。



「ただいま~美沙?帰ってないの?」

パチッと電気をつける音がして、健さんが帰ってきたのに気づいた。
もう真っ暗になってる。

「なんだ居るじゃない。部屋真っ暗にしてどうした?もしかして寝てた?」
「ううん。考え事してただけ」
「なんかあったの?」
「ううん」
「病院で何か言われた?」
「うん」
「なんて?」
「手術…できないかもって」
「なんで?ちゃんと話してくれないと俺分からないよ」
「貧血のほうが悪化してて、状態次第では手術できないって」
「それで?どうだったの?」
「まだ分からないけど、血液検査の結果はかなり悪くて、大学に行ってマルクしてきた。マルクの結果は一週間後にでるの」
「そっか…。でもまだ、出来ないって決まったわけじゃないんでしょ?」
「そうだけど…。皆協力してくれてたのに手術できないなんて…」
「美沙、勘違いするな。俺や亜美ちゃん、病院のスタッフが協力したり助けたりするのは、美沙に精一杯生きていてほしいからだよ。だから、美沙は何があっても、前向きに生きて。生きていてくれることが、俺たちへの一番の恩返しだから」
「うん…でも怖い。自分の身体なのによくわからないし。心だってそう。普通じゃない」
「大丈夫。俺は何があっても、ずっと美沙と一緒にいるよ。だから一緒に頑張ろう。一週間後の診察も、怖かったら一緒についていくから」
「ありがと…ごめんね…」

ずっと一緒…。
本当にずっと一緒に居れたらいいな。