何も言わずに手紙を受け取った健さんは、手紙を開いて少し読むと、手紙を持ったまま部屋の外へ出てしまった。

私は、健さんを追いかけることなく、部屋でジッと待つ。
追いかけなくても、健さんがなぜ出て行ったのか分かるから。

10分…15分…手紙を読み終わるには十分すぎる時間が過ぎて、やっと健さんは部屋に戻ってきた。目を真っ赤にして。

「これ、俺がもらっていいんだよね」
「うん。だって健さん宛だし」
「美沙にもきたの?」
「うん」
「そっか。俺のこと、美沙は恨んでる?」

恨んでる…?そう聞かれて、頭の中がぐちゃぐちゃと混乱していくのが分かった。
私の中の、この黒い感情は、恨みなのか、哀しみなのか、怒りなのか。
自分でも分からない。分からないから、なんて表現したらいいかが分からない。
健さんのことは好き、だけど嫌い。
そんな矛盾のせいなのかな。私の中が乱れるのは。

「分かんない。分かんないよ。そんなの…」

泣くのは我慢してたはずなのに、姉さんがいなくなって哀しいのは健さんも同じだから、ここへきても泣いちゃいけないと自分の中で決めていたのに、その決意はすぐに崩れてポロポロと涙がこぼれる。

「ごめん。今聞くことじゃなかったね」
「違う、健さんが悪いとか、そんなことじゃない。私なんていったらいいか分かんないだけだし。姉さんが急に、急に死んじゃうから…」

隠そうとしても隠しきれない言葉が、涙と一緒に出てくる。
止められない。止まらない。