健さんの家に着くと、ドアを開けるのことができなくて、ジッと立ち尽くしてしまった。

どんな顔したらいいの?

私の中で、健さんへの好きな気持ちと、裏切られた哀しみが混ざり合う。


私がきたことが分かったのか、すぐにドアは開いて部屋の中へ入れてもらった。

「遅い時間だけど、どうやってきたの?」
「橋本くんに送ってもらった…」
「そっか、美沙。辛い思いさせてごめん」
「…」

複雑な感情のせいで、何を言ってよくて何を言ったら健さんを傷つけるか、それがまったくコントロールできない。
下手に言葉を発するよりも、今日の目的を果たすのが先。
私は、何も言わないまま、健さんに姉さんからの手紙を渡す。