翌朝、携帯の着信音が部屋に響いた。
着信は、姉さんが入院している病院から。
もしかして、なにかあったの?

眠気も一気に目が覚めて、通話ボタンを押す。

「もしもし?」
「小山美沙さんの携帯でお間違えないでしょうか?私、若浦病院の尾賀と申します」
「なにかあったんですか」
「それが…。院内の上層階から飛び降りを…」
「どうしてちゃんと見てなかったんだよ!!!!」

電話の相手が話を全て言い終わる前に、私は家を出て、まだ薄暗く夜も明けてない中を走る。この時間帯にタクシーが止まっている場所へ。
病院の名前と、人の命がかかってるから、なるべく急いでくださいと運転手にお願いして、私は、いとこに連絡する。
家族を呼ぶべきなんだろうけど、私は、姉さんといとこたちの連絡先しか知らなかった。
お母さんの連絡先も居場所もなにもしらない…。

―健さん。ありさ死んじゃうかも。いま病院に向かってるど、詳しいことが分かったら、また連絡するね―

健さんには、それだけ、メールした。実際、今どんな状態なのか、病院につかないとわからないから。