私の思考は、ひどくはっきりしなくて、下手なことをいってしまわないように、すこしでも嫌われてしまうようなことをしないように、部屋の隅っこでジッと膝を抱え込んだ。
そんな私を、健さんはジッと見つめる。

「こっちにおいで?」

また、身体がビクリと反応するのが分かる。
そっと、健さんのほうへ近づく。
私の身体は、物音を立てないくらい静かに動いた。
まるで、音を立てることがいけないかのような空気を勝手に感じて。

「どこ怪我したの?」
「こことここ…」


必要以上は何も言わず。
最低限の言葉で、怪我した場所を示す。

「痛かったね」
「うん」

怪我した場所を気遣ってくれたのか、いつもの何倍も優しく私を抱きしめてくれた。
ギュッと強く抱きしめることはしなくても、健さんのあたたかさとか、優しさとか、安心感とか、いろんなものが、私の身体に心に溢れた。