「じゃあ、小山さんが知っている『優』という人についてなんだけどね、彼女は僕と一番最初にあった人格なんだ。あぁ、この説明では人格の事を人って呼ぶけど大丈夫かな?彼女たちがナカで聞いていて人格と呼ばれることを嫌がったりするからね。嫌だったら言ってね?」

「大丈夫です…」

「そう、分かりましたっと。彼女が最初ここに来たのはね。眠れない、不眠の症状と、いきなり襲われる不安感をどうにかしてほしいっていってきたんだよね。そこで、ひとつ気になってたことがあったんだけど、その症状の相談のほかに、身分を証明することや存在の意味を僕に何度も聞いてきたんだ。保険保険証には『小山美沙』って書いてあるのに、『安藤優』と名乗るところも。ここは、いろんな心の病気を抱えてるから、自分の事をちゃんと理解できない人たちも、たくさん来るから珍しくはないんだけども。それでも、彼女は、自分を何度も『安藤優』だと主張し続けた。とにかく、長期間みてみないと分からないからね、それからしばらくは、カウンセリングしながら、投薬治療を続けていったんだ。彼女は、すごく精神的に波があってね、3度ひどい自傷で病院に運ばれてきたことがあった。その直後に、『みく』という人に出会った。そこで初めて解離性同一性障害を疑ったんだ。自己防衛の為に幼い人格が出てくるのは、よくあげられるケースなんだ。」

幼い人格?『優』と『みく』がどう違うの?

「あの…優とみくの違いがよくわからないんですけど」

「あぁ、そうだよね。ごめんね」

いい加減な医者だなと、心の中でつぶやいた。
この人は、大丈夫なんだろうか…。