運ばれてくる食事も、毎日打たれる点滴も。
なにも感じさせなかった。
夢か現実か、今もわかないまま。
いつ出られるのか。どうやったらここから出れるのか。
そればかり考えて過ごす日々が続く―

ある日、看護師から、面会にきている人がいるといわれた。
名前を聞いたら上野和人と教えられた。
和人…。確かあの女の人が、言っていた名前。
面会の時間を1時間だけと決めて、それでもいいなら、会うと看護師に伝える。