しばらく待つと、聞えるか聞えないかくらいの小さな声で、お母さんは話し始めた。
「花梨の…」
「花梨?」
「花梨の父親が、亜美たちの父親と違うことを知られたくなくて…」
「はぁ!?意味分からないんだけど」
「…花梨は、他の人との子供なの。それを、あの人にも、あなたたちにも知られたくなくて…」
「はは、あははっ。超ウケる。自分が浮気した男の子どもを知られたくなくて、旦那と子供捨てるなんて」
本当にくだらない理由。もうあきれて笑いしか出てこない
「あの人だって!あの人だって…浮気してたのよ…。母親として妻として最低だって分かってるの。分かってるけど耐えられなかったのよ!!」
声をあげて泣き出す姿を見ても、怒りや憎しみの感情しか出てこなかった。結局自分勝手な都合…。私たちのことなんかこれっぽっちも考えてなんかない。
この人も、お父さんと一緒……。
やっぱり私は、ここで生きていくしかない―
「そんなの自分たちの勝手じゃん。私や、お姉ちゃんは何も悪いことしてない。お母さんが出ていったせいで、今までどれだけ辛かったと思ってるの?淋しかったと思ってるの?」
「ごめんなさい…。でも、亜美や早織は、もうお父さんのもとには戻れないのよ…」
「また意味わかんないこと言って…。ほんとイライラする!!そもそも会話がなりたってない。ちゃんと順番に話してよ」
そこから、この3年間の生活の話が始まった。
ポツリポツリと、ひとりごとのようにお母さんは話して。私はそれを何も言わずに聞いていた…―