僕は大学の図書館でアルバイトしている。
はっきりいって、時給なんてめちゃくちゃ低い。そこらのコンビニのほうがまだマシだろう。
それでも僕が続けているのは、一つは使用頻度が高いこと、空き時間に好きな本が読めること、新入庫の本だって登録前に読めてしまうという、本の虫ならではの利点があるからだ。
もう一つは、まぁまたあとで話すことにしよう。
僕は今日も、返却用のカウンターに座って新刊の小説を読んでいた。
いつもならば人が前に立っても気づかないくらい没頭してしまうのだが、今日はそうはいかない。
隣の貸出用カウンターに座る人物が、僕を落ち着かなくさせるからだ。
「くしゅっ」
まるでマンガのキャラクターみたいな可愛らしいクシャミ。
彼女の名前は、一ノ瀬 楓。
3ヶ月前から、図書館で働き出した21歳。
肩にかかる黒髪を手で軽く梳きながら、人が通ったことで開いたドアを見ている。
外に続くガラスドアに近いカウンターは、季節は秋と名乗っていてもドアが開くたびにもう冷たい風が流れ込む。
暖房はついているけど、ときどきは肌寒く感じる。
「大丈夫?」
声をかけると、彼女の視線がくりっとこちらを向く。
大きいってわけじゃないんだけど、愛嬌があるっていうか、上目遣いとかかなり可愛いなって思う目が僕を見て、動作は大きく、声は小さく頷く。
「うん。むずむずしただけ」
ちょっと照れ笑い。
意味もなく長めの袖に手の甲まで隠したり。
その動作がいちいち可愛い。
「上着取ってくる? カウンター、今暇だし」
僕の言葉に、ありがとって言って、小走りに司書室のロッカーに向かっていく。
もう説明なんていらないと思うけど、僕は彼女のことが好きです。
とはいえ、付き合ってるわけでもなければ、告白する気もありません。
なぜなら彼女の左手には、
きらりと光る石のついた、指輪がはめられていて。
つまりは特別な人がいるんだと。
僕に無言で訴えるからです…。
はっきりいって、時給なんてめちゃくちゃ低い。そこらのコンビニのほうがまだマシだろう。
それでも僕が続けているのは、一つは使用頻度が高いこと、空き時間に好きな本が読めること、新入庫の本だって登録前に読めてしまうという、本の虫ならではの利点があるからだ。
もう一つは、まぁまたあとで話すことにしよう。
僕は今日も、返却用のカウンターに座って新刊の小説を読んでいた。
いつもならば人が前に立っても気づかないくらい没頭してしまうのだが、今日はそうはいかない。
隣の貸出用カウンターに座る人物が、僕を落ち着かなくさせるからだ。
「くしゅっ」
まるでマンガのキャラクターみたいな可愛らしいクシャミ。
彼女の名前は、一ノ瀬 楓。
3ヶ月前から、図書館で働き出した21歳。
肩にかかる黒髪を手で軽く梳きながら、人が通ったことで開いたドアを見ている。
外に続くガラスドアに近いカウンターは、季節は秋と名乗っていてもドアが開くたびにもう冷たい風が流れ込む。
暖房はついているけど、ときどきは肌寒く感じる。
「大丈夫?」
声をかけると、彼女の視線がくりっとこちらを向く。
大きいってわけじゃないんだけど、愛嬌があるっていうか、上目遣いとかかなり可愛いなって思う目が僕を見て、動作は大きく、声は小さく頷く。
「うん。むずむずしただけ」
ちょっと照れ笑い。
意味もなく長めの袖に手の甲まで隠したり。
その動作がいちいち可愛い。
「上着取ってくる? カウンター、今暇だし」
僕の言葉に、ありがとって言って、小走りに司書室のロッカーに向かっていく。
もう説明なんていらないと思うけど、僕は彼女のことが好きです。
とはいえ、付き合ってるわけでもなければ、告白する気もありません。
なぜなら彼女の左手には、
きらりと光る石のついた、指輪がはめられていて。
つまりは特別な人がいるんだと。
僕に無言で訴えるからです…。